おっさんエンジニア

JP1:あのJ、ジョブ管理の王

JP1:あのJ、ジョブ管理の王

〜“ajsprint”が読めれば一人前〜

🏯 はじめに:あの頃、ジョブは神だった

令和の今、CI/CDが当たり前になり、GitHub ActionsやCircleCIでのデプロイがワンクリックで行える時代。構成管理もクラウドのスケールアウトも、すべてがGUIとAPIでコントロール可能になった今こそ、あえて振り返ってみたい。

だがかつて、ジョブ管理=JP1という絶対的な構図が存在した。「あのJ」と呼ばれた、ジョブ管理の王──それは企業システムの心臓部を預かるインフラ屋にとって、避けて通れない存在だった。

🧩 ajsprint地獄

ジョブステータスを確認するには、

ajsprint -s long -j job_name -n all

この呪文を唱える必要があった。しかも出てくる結果はすべて省略記号の嵐。「RQ(待機)」「CNF(確認)」「DLY(遅延)」… それぞれの記号の意味を覚えなければ、現場では一人前と認められなかった。

そして、先輩は言った。「あ?ジョブ名?そんなの記憶とgrepで探すんだよ」

🧙 カレンダー地獄:ジョブが動かない理由 No.1

  • 「なんで昨日ジョブ走ってないんだ?」→ 営業日カレンダーが抜けていた
  • 「月末の処理がスキップされてる!」→ 祝日定義がされてなかった
  • 「年度替わりに毎年死ぬ」→ 暦の概念と命の重みを学ぶ

JP1は“カレンダー駆動”という深淵な思想を備えていた。設定ミスひとつで、ジョブは動かない、怒号が飛ぶ、ログも出ない──そんな現実があった。

🗺 ジョブネット図とPDF印刷(できない)

複雑な依存関係をもつジョブネットは、画面に収まらない。並列処理、遅延処理、終了判定付きの分岐などが絡むと、可視化ツールも限界を迎える。

そして当然のように「PDF出力…」と言いたいところだが、

「PDF出力はライセンスがないので使えません」

なんとパワポもライセンスがない現場多数。そのため、

  • Excelでフローチャートを再現
  • スクショを繋げてHTMLに貼る
  • ホワイトボードに手描き(最強)

「この矢印が“完了待ち”だから、あっちのトリガーが…」という解説は、プロジェクトルームの壁面で延々と続けられた。

「誰か、PDF出力ライセンスとパワポ買ってくれ…」

👴 あの時代のエンジニアあるある

  • 「ajslogの出力が出ない」→ ジョブIDを間違えてる
  • 「ajsstopしたら全ジョブ停止した」→ QAでやるな
  • 「再起動後にajsstart忘れて阿鼻叫喚」
  • 「ajsdefineを怖くて触れない」→ 脳内ジョブ定義職人の登場

どこの現場にも「JP1の番人」がいた。再定義・調整・再開を一手に担うその人は、他部署から“祈りの対象”として扱われるほどの存在感だった。

📣 現代に残したい“あのJ”の魂

JP1は、重くて古くてGUIも使いづらかった。

でも──あれ一つでバッチを毎日何百本も安定稼働させていたという事実。

ジョブの管理、依存、実行順、例外処理、そして復旧。
それらすべてが詰まった“信頼の塊”だった。

🎁 まとめ:JP1は現場の知恵の集合体だった

「スクリプトを作るのは簡単。でも、動かし続けるのが難しい。」

この真理を、JP1は現場で身をもって教えてくれた。

あなたの現場にも、きっとまだ“あのJ”が動いているかもしれない。
そしてそれは決して恥ではなく、誇るべき“現場の信頼”である。

📝 次回予告

「神H:HULFT、転送の美学」
「通った?」「文字化けしてない?」
それが毎日の緊張だった──あの時代へ。

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