ARCserve:轟A、テープチェンジャーの咆哮
〜その音が聞こえる限り、俺たちは守られている〜
📼 はじめに:バックアップとは“音”だった
夜、静まり返ったサーバールームに響くウィーン……ガチャン……という音。
それはARCserveのテープチェンジャーが命を吹き込まれた音。我々はそれを「轟音」と呼び、毎朝その音がしたかどうかで安心していた。
轟A(ごうえー)とは、バックアップの概念に“音響”を加えた、伝説の物理系バックアップソフトである。
🧱 それは、ラック最下段の異物から始まった
どこのサーバールームにも、ラックの一番下に不自然なスリットがあった。
開けるとそこには、DAT/DLT/LTOのテープがずらり。
そしてその中に人知れず収まっていたのが、ARCserveのテープチェンジャー。
そこから、あの音が鳴り響くのだ。
「ウィーン(アーム動作)」
「ガチャ(カートリッジ挿入)」
「キュイィィン(読み込み開始)」
音のバリエーションで、失敗か成功かを判断するのが熟練の証だった。
💥 テープ事故あるある
- ラベル貼りミス → 違うテープを使って上書き
- 月曜朝、テープ未交換 → 金曜分が消える
- 湿度・静電気で読み取りエラー → ノイズにしか見えないログ
- 復旧直前に「CRCエラー」で全部パー
「ちゃんとテープを休ませましたか?」という謎のアドバイスすらあった。
🕰️ 「交換作業」は儀式だった
毎朝、誰かが手作業でテープを差し替える。チェックリストに「テープ交換済み □」と鉛筆で書き込む。しかも、
- 「月曜は月1保存の“赤ラベル”」
- 「金曜は週次“青ラベル”、隔週で“緑ラベル”」
といった色分け運用が全社的に存在していた。
ラベルを切って貼るのが新人の最初の仕事という現場もあったほどである。
🧙♂️ 現場に1人はいた「復旧魔術師」
ARCserveでのリストアは、GUIからできるとはいえ一発で成功しない。
- 「ああ、テープ認識がズレてる」
- 「まずimportしてcatalog作り直すんだよ」
- 「前回のjob.logってどこ?」
そう言いながら、マウント → スキャン → リストアのフローを数十クリックでやってのけるのが「魔術師」だった。
職人のクリック数は、マウスではなく「勘と呼吸」で制御されていた。
📣 残響:轟音が消えた日
クラウド、スナップショット、世代バックアップ。技術が進化して、物理メディアは消えた。
そして気がつけば、あの音もしなくなった。
でも今でも時折──
「ウィーン……ガチャン」
という幻聴に、懐かしさと安心を覚える者がいる。
🎁 まとめ:轟Aは音で守ったバックアップ文化
バックアップとは、単なるデータのコピーではない。
「音で知らせ、手で交換し、目で確認する」——五感で行う儀式こそ、あの時代の運用だった。
轟Aは、今なお古いデータセンターのどこかで、カートリッジを握りしめているかもしれない。
⏭ 次回予告:「WebSAM:千の手を持つ者、NECの黙示録」
国産商用管理ソフト最大の謎、「あれ、WebSAMって結局何?」に迫る。
スケジューラ、監視、ログ、印刷、ジョブ、保守連絡──
全方向展開で現場を包囲した“千手観音”の正体とは。
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