WTSとRDS、その先に何がある
〜ターミナルサーバという概念の変遷〜
🏛 WTS:Windows Terminal Servicesの時代
かつて、Microsoftは Windows Terminal Services(通称WTS) という名前で、リモートデスクトップの世界を開いた。Windows 2000 Server に同梱されたそれは、Citrix MetaFrame の兄弟のように現場に浸透していった。
GUIを共有し、CPUとメモリを奪い合い、「1人がExcelでVLOOKUP使うと全員が巻き添えになる」──そんなスリリングな時代だった。
🚪 RDS:Remote Desktop Servicesへの改名
2008年、WTSは静かに名前を変えた。Remote Desktop Services(RDS)。
名前こそ変わったが、実態は変わらず──
- セッションベースの共有
- RemoteAppによるアプリ単体公開
- GPOによる制御とログオンスクリプト地獄
「やれることは多い。でも、きれいに運用できている現場は少ない」
🧠 Citrixとのすれ違い
MicrosoftはRDSをベースにしてCitrixと競合するかたちとなり、「XenApp vs RDS」という構図が生まれた。
- 「RDSでもできるよ」
- 「いや、Citrixじゃないと不安」
どちらも正しいが、現場での違いはシビアだった。CitrixのHDXに比べ、RDSの描画や遅延、印刷処理のトラブル対応には涙が付き物だった。
☁ そして時代はクラウドへ:WVDからAVDへ
2020年代、MicrosoftはついにRDSの概念をクラウドへ解き放つ──
Windows Virtual Desktop(WVD)。そして今は Azure Virtual Desktop(AVD)。
- Azure ADと連携
- FSLogixによるプロファイル高速化
- クラウドスケールで展開・停止も自動化
「もうオンプレミスでRDSを構築する必要はない」── そう言い切れる時代が来たのだ。
👴 あの頃の“WTSあるある”
- 「ログイン時に真っ白い壁紙が延々と表示される」
- 「ログオフ処理が終わらない」→ ユーザーは“寝落ち”している
- 「印刷はローカルに出るはずが、なぜか別部署に出力」
- 「GPOで壁紙を禁止したのに、“天使の羽”が消えない」
📣 RDSは終わったのか?
いいえ。RDSは今も企業の内部業務に根強く残る。
しかし、クラウドネイティブ時代においては、RDSは「選ばれる理由」が必要になった。
“それしか選択肢がなかった”時代から、“他にも選択肢がある”時代へ──
🎁 まとめ:ターミナルサーバは、変化を続けている
WTSからRDS、そしてAVDへ。名前は変われど、「遠隔から安全に業務を行う」本質は変わらない。
そして、すべての仮想デスクトップは、WTSという始祖の影を継いでいる。
🧭 次回予告:終わらない印刷トラブルの系譜
プリンタマッピング、ドライバ地獄、リモート印刷──
どこで壊れる?誰が悪い? その果てなき戦いを、次回「印刷という名の業務災害」にてお届けします。
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